ド ナ ー に な る と い う こ と 体 験 、 そ し て 願 い
私が神奈川骨髄移植を考える会のメンバーにな ったのは、 2 0 年ほど前 、 大切な友人が白血病で亡 くなり、何か出来ることはなかったのだろうか、 との後悔からでした。 その後、長年ボランティアをしていましたが、 このたび、ドナーに選ばれました。この経験が今 後の移植数の増加につながるようにとの思いをこ め、体験を書かせていただきます。
◆ 適 合 通 知 が 届 き ま し た ある日、オレンジ色の封筒で公益財団法人日本 骨髄バンク(以下、バンク)から「ドナー適合通 知」が届きました。私のように日々骨髄バンクに 関わる者でさえ、突然にやってきた感じがしまし た 。 封筒の中には、ドナーに選ばれたお知らせ、ド ナーのためのハンドブックとアンケート用紙が入 っています。 ア ン ケ ー ト の 質 問 1 で 、「 ド ナ ー に な る 意 思 の 有 無」について聞かれます。今回は無理と判断した ら 、「 い い え 」 と 返 信 を し ま す 。 可 能 と 思 っ た ら 、 2番目以降の質問(予定や健康状態 、渡航先 に つ いてなど)を記入して返信します。 ここで「はい」と回 答 し て も 、 最 終 候 補 者 に な る訳ではありません。後日、返信したアンケート の内容について、担当のコーディネーターから電 話で質問を受け、候補者の 1 人として次のステッ プへ進むかの連絡を待ちます。なお、担当のコー デ ィ ネ ー タ ー に よ り ま す と 、「 お 断 り の 回 答 で も あ りがたいお返事です。延滞を避けられるからです」 とのことでした。
◆ 採 取 病 院 、 採 取 医 師 に つ い て 当会で顧問をしていただいている先生の病院で 採取しました。 問 診 で 私 の 病 歴 を 伝 え た ら 、 担 当 の 先 生 が 、「 大 変でしたね」と言ってくださいました。その言葉 をいただけたので安心して採取に臨むことができ ました。 ◆ 日 程 の 調 整 に つ い て コーディネーターへは、数か月後までの大まかな 予定は伝えてありましたが、具体的な日にちでの 問い合せが来るようになりました。そして、最終 候補者に選ばれ、最終同意日と採取日が決まりま した。自己血の採血や健康診断は採取病院で相談 して予約をしました。 いずれの日も平日の日中だけでしたので、普通 のサラリーマンには負担になるなあ、と改めて思 いました。
◆ 最 終 同 意 に つ い て 最 終 同 意 は 、ド ナ ー・家 族・ コーディネーター・ 医師・弁護士が同席して行われます。 私の場合は家族として母が同席しました。コー ディネーターから母へ「ドナーの ための ハンドブ ック」の説明がされ、決意を持って臨んだ母はす べ て 了 承 し 、最 終 同 意 の 書 類 に サ イ ン を し ま し た 。 2 でも、高齢の母の同意が必要なのかどうか疑問 に思いました。ドナーが希望した場 合は、家族へ は説明するだけでもいいように思いました。 ケ ー スバイケースで、 ド ナ ー 本 人 か ら 「 家 族 の 同 意 は 不要」という誓約書もらうことで解決できないの だろう か。バンク側の シ ス テ ム 再考を願います。
◆ 仕 事 を 休 む と い う こ と 職場の管理職から「有給を使うならいい」と了 解をもらい、休みをとることができました。同僚 にはドナーとなる説明をし、好意的に理解しても らいました。転職したばかりで正社員ではない立 場でしたから、いろいろな不安があり、職場での 理解を得ることを負担に思いました。 入院に 4 日 、 そ の ほ か 半 日 休 み を 6 回取りまし た。私の有給は 半 年 後 ま で の期間 、 残り2日とな りました。
◆ 採 取 が 近 づ い て か ら 最終候補者に選ばれた後、 風邪気味になりまし たが、コーディネーターの許可を得て、近くの病 院 で 受 診 し 、「 骨 髄 バ ン ク のドナーになる」旨を伝 えて薬の処方を受けました。この場合の治療費 ( 2 回 で 6 千円ほど)は自己負担とのことでした。採 取の直前は、ヘアカラーもお酒も控え、普段のぐ うたらな生活とは違う緊張感のある日々を過ごし ました。ちなみに、ドナーになると交通費以外に 入院支度金として一律 5 千円が支給されます。
◆ い よ い よ 採 取 入院初日は、担当医やら麻酔医やら看護師やら が病室に来る以外はゆったりと過ごし、入浴、夕 食の後、9 時 に は 就 寝 し ま し た 。2 日 目 、採 取 の 朝 、 歩いて手術室 へ 行 き 、 手 術 台 に の ぼ り 酸 素 マ ス ク を付けられたと思ったら、気が付いたときにはす べて終了し、自分のベッドに戻っていました。 3 時 ご ろ に は 自 力 で ト イ レ に も 行 け ま し た 。若 干 の腰の痛みと、ふらふらする感じがありました。 夕飯を食ベ 9 時に消灯。3 日目は安静に過ごしまし た。回診に来た担当医から「年齢のわりには、活 発な細胞数の骨髄が取れたから、患者さんには良 かったと思います」と言われ、肌年齢ならぬ骨髄 年齢が若いとほめられた気がして嬉しかったです。 4 日目に無事に退院をして、5 日目には職場復帰を しました。
◆ 提 供 し た 後 の 感 想 直 後 の 感 想 は 、「 痛 か っ た 」 で も 「 感 動 し た 」 で も あ り ま せ ん 。「 あ あ 、 疲 れ た な ぁ 」 で あ り 、 プ レ ッシャーから開放された安堵感でした。移植の数 日 後 、 患 者 さ ん か ら お 手 紙 を い た だ き ま し た 。「 絶 望の中から生きる希望をもらいました」という内 容でした。命をつなぐ 希 望 の お手伝いが出来て何 よりうれしく思いました。 適合通知が来て採取まで 3 ヶ月ほど、体調は術 後 1 か月ほどですっかり元にもどりました。 今は、ドナーになれて 本 当 に 満足しています。
◆ 生 命 保 険 ( 入 院 保 障 ) に つ い て 私が加入していたのは大手MY生命でした。バ ンクのホー ムページ を 見 て 入 院 保 障 が 出 な い の を 知っていましたが、請求したところ、回答は「治 療 で は な い か ら 支 給 で き な い 」 と の こ と 。「 他 社 は ほとんど支給されるが、今後、検討する方向にあ るか?」との問いには「ありません」との回答で したので、お客様の声として会社へ伝えるよう依 頼しました。
◆ 説 明 員 の 役 割 説明員はグラビアで正しく説明するのはもちろ んですが、躊躇した方には登録を勧めないと判断 すること、これも大事な役割と感じました。 登 録 する時点で心構えがあるかないかは、ドナーに選 ばれた時に重要になるのだ、と感じました。 ド ナ ー登録人数の増加ありきで は ダメなのです。
◆ コ ー デ ィ ネ ー タ ー の 役 割 全 体 の予定 ( 移 植 日 な ど ) をコントロール す る 他 、 ドナー か ら いろいろ な個人的 事 情 を聞く 重 要 な存在です。コーディネートが進むと連絡は具体 的になり、その都度、 ド ナ ー の 意 志 を 確 か め な け ればいけません。 ドナー は 変わらぬ意志を持ち続 けるのは大変な事 な の で す 。 重 圧 か ら か 、 挫 折 さ れて連絡が取れなくなる方もいるそうです。
◆ 私 た ち ボ ラ ン テ ィ ア も 、 次 の ス テ ッ プ へ これまで当会でも、ドナーの登録者数を伸すこ とを目標として来ました。現在ドナー登録者数は 4 5 万人を超え、確率としては 9 割 以 上 の 患 者 に は 1 人以上のドナーが見つかると言われています。 一 方 、移 植 に 至 る 登 録 患 者 は お お よ そ 6 割 弱 で す 。 3 バンクの 平 成 2 6 年 度 説 明 員 研 修 資 料 に よ る と ド ナーの健康以外で終了した理由 6 6% 、 そ の 内 、 都 合がつかないは 4 7% 、連 絡 が 取 れ な い 2 9% で す( 前 年 度 デ ー タ )。 この現状を見て、 ド ナ ー 都 合 に よ る 終 了 理 由 を 減らしていくのが今後の当会の役割と思いました。 各地で動き始めた提供ドナー助成金制度を広める こともひとつの方法と思います。神奈川でも実現 できるように動きましょう。 また、連絡が取れないケース ですが、これは、 バンクに関わる全体で解決すべき課題と思いまし た 。ぜひ、少 し で も 減 ら せ る 工 夫 を 考 え ま し ょ う 。 最 後 に 、「 移 植 を 受 け る 土 俵 に 立 ち た か っ た 」 と い う 、ある患者さんの言葉を思います。患者さん に「生きるチャンス」を。 私は、ドナーとなったことで、今後も骨髄バン ク支援活動に関わっていこうと思いを新たにして います。